フォークを使うための手の機能
フォークを使う~道具に対する介入~
手の機能回復において、食事動作はとても重要になります。
食事はだれもが毎日行う作業の一つですし、箸やスプーン・フォークといった食具を使いますので、高い手の操作能力が求められるからです。
今回は、担当する利用者様の中でフォーク操作の獲得をしたい方がいましたので、フォークの操作をするときにどのような観点でリハビリを考えるかについて書いていきたいと思います。
まず最初にフォークという道具の特徴を押さえておきたいと思います。
フォークの種類にもよりますが、多くのフォークは持ち手が平べったい作りになっています。
これを回転させようとすると、写真のように中指で固定させながら、主運動を人差し指、補助運動を親指が担うことになるかと思います。
その際狭い接地面(写真中央)から広い支接地面(写真右)への移行が求められるため、この部分で力のコントロールや巧緻性が求められます。
実際に試して頂くとわかりやすいですが、ペンをフォークのように回転させた方が楽かと思います。
ペンは円形なため、基本的に回転させても接地面が一定になります。そのためフォークに比べてコントロールしやすいと考えられます。
なので、この点から介入方法を検討すると、まずは「持ち手の工夫を行う」という介入が考えられます。いわゆる機能面への介入ではなく、道具・環境設定からの介入方法になります。
具体的にはグリップをつけるなどの対応が挙げられます。テープなどを巻き付けて持ち手に丸みや太さを出すという対応を提案することもあります。
フォークを使う~機能面に対する介入~
先ほどはスプーンという物自体に変化を加える対応方法でしたが、続いては機能面への介入です。
機能面に対する介入を行う際は、具体的にどの工程においてどこに問題があるかを我々は評価する必要があります。
例えば、
・指の分離(指がそれぞれ独立して意識的に動かすことができるか)
・指の協調性(複数指が連動して動かすことができるか)
・手関節の安定性
・前腕の回内-回外の運動能力(手のひらを上に向けたり下に向けたりする運動の随意能力)
・肩関節、肩甲帯の安定性
などを確認します。
フォークを動かすには、当然手先の随意性や器用さが求められるのですが、常に肘をついて食事をするわけではないので、手を長く空間保持しながら手の操作を行う必要があります。
そう考えると、肩の安定性が乏しいと、腕が重くて巧緻動作を上手く実現できないかもしれません。
また、手首の随意性や安定性が低いことで、指の滑らかな運動ができないかもしれません。
このようなポイントを実際に動きをして見させて頂きながら確認していきます。具体的な課題点が分かれば、その運動に近い課題を実施したり段階付けを行い、最終的な目標とする課題の獲得まで練習をしていきます。
麻痺側で食具を操作することは非常にレベルが高いですが、その方にあった段階付けを提案できるよう心がけております。