感覚障害に対するアプローチ法について

感覚障害に対するアプローチ指針

脳卒中などが生じると、感覚障害を生じるケースがあります。

感覚障害のリハビリには確立された方法はまだなく、回復に難渋するケースが多いです。


一つの指針として、2014年のLeeanne M. Careyらが報告している「感覚に対するアプローチの原則」について紹介したいと思います。

ここでは、知覚学習、神経可塑性、体性感覚システムの生理学の理論から導き出された感覚トレーニングの原則の概要を示しています。

 

【アプローチの原則】

①特定の刺激を反復

 特定の感覚課題(刺激)を反復して行うことで、脳の感覚野に使用依存的な可塑性変化が生じる

 

②探索的注意

 積極的かつ意識的に目的の感覚刺激を探索する。物品探索などにおいて、違いのある特徴に注意を向けるなど。
 注意は、学習の初期段階において、皮質の可塑性を調節するのにも重要であると考えられている。

 

③視覚遮断

 対象者が体性感覚刺激に集中できるよう視覚を遮断する

 

④動機付け・意味性のある課題

 脳は意味のある目標に反応するため、脳の機能再編成の可能性を引き出すためには、トレーニングは目標に向かっ
て、興味深く、要求の高いものでなければならない

 

⑤予測的施行

 予測的な刺激と直接的な刺激では脳の同じ部位が活動する事が言われている。対象者に刺激がどのように感じられる 
かを想像するように促す(この刺激をされたらどのように感じるかをイメージしてもらう)ことも有効な可能性あり

 

⑥探索方法、正確性、まとめに対するフィードバック

 フィードバックは神経ネットワークの強化をして学習に繋がる。反応の正確さや探索の方法などに関するフィードバックを提供することが望ましい。フィードバックは即座に、正確に、定量的に行う必要がある。まとめのフィードバックも学習効果を高めるので 、各トレーニングセッションの最後にもフィードバックを提供すべき。

 

⑦感覚の差の区別に対する段階付け

 感覚をもう一方の手と比較したり、視覚を利用するなど複数のモダリティを同時に利用する。また、ある刺激から別の刺激へと移行するには、段階的に提示する必要がある。セット内だけでなく、刺激セット間でも段階的な難易度を定義する必要がある

 

⑧集中練習

 パフォーマンスを向上させ維持するためにはトレーニングを継続すべきであることが示唆されている(集中的な練習が求められる)

 

⑨刺激の多様性、トレーニングの原則を提示

 例えば粗さの特性などの特徴を持つ様々な刺激を用いたトレーニングや、タスク・環境のバリエーションを考慮した刺激が必要。トレーニングを行う上での原則やそれが課題にどのように適用されるかに関する具体的な指導も、学習強化に関連している



いかがでしょうか。
 

上記をふまえると、感覚障害に対しては単純に感覚入力(触ったり振動刺激をしたりなど)をするだけでなく、複数の感覚を用いたり注意機能を用いたり、フィードバックや段階付けなども重要という事が言えます。

 

それでもなかなか感覚障害に対するリハビリは困難を極めますが、我々としてはこのような知見を参考にしつつ、介入に活かしております。

 

参考

Carey LM : Loss of somatic sensation. Textbook of Neural Repair and Rehabilitation. Vol Ⅱ. Medical Neurorehabilitation. 2nd Ed. Selzer M, Clarke S, Cohen L, et al,(eds),pp298-311,Cambridge Univ. Pess, Cambridge.2014

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