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自費リハビリにおける高次脳機能障害に対する支援

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳損傷(脳卒中、脳外傷、低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎などの後天性の脳疾患)が原因の失語・失行・失認や記憶障害など各種の認知機能の障害と学術的に定義されています。

①物や空間の認知、②目的を伴う行為、③意思を表現・伝達・理解する言語、④物事の記憶、⑤計画的に行動する能力など各種の認知機能低下があり、損傷の部位や程度によって病態は様々です。


ここで、それぞれの症状についてもう少し詳しく示してみたいと思います 1)。


①物や空間の認知
〇視覚失認:視覚性に呈示された物品の認知障害。十分な視力・視野が保たれているが、物品を見て何かがわからない状態であり、呼称も使用法の説明も困難。
〇相貌失認:主に顔を対象とした視覚性の認知障害であり、熟知した顔を見て誰かがわからなくなる症状。
〇︎地誌的見当識障害:見渡せる範囲を超えて屋内外を移動する際に道に迷う症状。
〇︎半側空間無視:「左右の空間についてほぼ平等に、外界を見渡したり、そこにある物を操作したり、その中を移動できる」という正常機能の一側が障害されたもの。右半球損傷後の高次脳機能障害として最も多くみられる。
〇︎片麻痺に対する病態失認:片麻痺の存在を無視または否認する症状。
〇︎構成障害:細部を明確に知覚し、対象の構成部分の関係を把握して正しく合成することを要する、組み合わせまたは構成の活動の障害。
〇︎バリント症候群:視覚性注意障害(視野の主に中心部で典型的には1つの物体しか見ることができない症状)、精神性注視麻痺(対象への視線の移動が難しく、固視も不確実な症状)、視覚失調(発見し固視した対象であってもスムーズに手を伸ばして掴むことができない症状)の3徴候からなる症候群。

②目的を伴う行為
〇︎失行:学習された意図的行為を遂行する能力の障害。基本的には右利き者では左半球損傷で起こり、左右の上肢に症状がみられる。失語と合併して起こることが多いが、失行と失語は独立して生じ得る。
・主な失行症状:観念運動失行、観念失行、肢節運動失行、口腔顔面失行
〇︎運動維持困難:閉眼、開口などの定常的動作を、指示に従って1つずつ、または2つ以上同時に維持できない症状。
〇運動無視:病巣と対側の上下肢の運動や使用が減少する症状。随意的ならびに反射的動作、または検査場面と日常生活場面のいずれでも認められる。患側が動かないと訴えることも特徴である。
〇︎把握現象:自己の意思とは無関係に、手に触れた物や視野内に呈示された物を握ってしまう現象。主に、把握反射、本態性把握反応に分けられる。
〇︎行為・行動の抑制障害:行為の抑制障害は身体の一部分に限定された本人の意思に従わない運動・行為の異常。行動の抑制障害はある程度意思を巻き込んだ行動の異常のこと。

③意思を表現・伝達・理解する言語

〇︎失語:発話、理解、呼称、復唱の4つに大別される言語の障害
・主要な4つの失語型の分類:全失語(非流暢、重度の理解障害、復唱不良)・ブローカ失語(非流暢、軽~中度の理解障害、復唱不良)・ウェルニッケ失語(流暢、中重度の理解障害、復唱不良)・健忘失語(流暢、理解障害なしまたは軽度、復唱良好)がある。
〇︎失読、失書:読みと書字の能力が障害された状態の総称。失語や認知症、重度の失行、半側空間無視、視空間性障害などの高次脳機能障害の二次的障害として起こることもある。

④物事の記憶
〇︎記憶障害:エピソード、知識、行為、手続きの如何を問わず、あらゆる体験を脳が処理できる形に符号化し、貯蔵し、取り出す機能の総体
・主要な分類:陳述記憶、手続き記憶、エピソード記憶、意味記憶
・記憶障害の分類:エピソード記憶の障害(前向性健忘、逆向性健忘)、短期記憶障害、意味記憶障害、作話

〇︎認知症:様々なタイプの記憶障害とそれ以外の複数の高次脳機能障害が組み合わさり、日常生活・社会生活の障害をきたした進行性または慢性的な症候
・認知症症状、認知症性疾患の分類:アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、皮質性認知症、皮質下性認知症、血管性認知症

⑤計画的に行動する能力
〇︎遂行機能障害:自ら目標を定め、計画性を持ち、必要な方略を適宜用い、同時進行で起こる様々な出来事を処理し、自己と周囲の関係に配慮し、長期的な展望で、持続性を持って行動する、という一連の流れを遂行することが難しくなる。物事への注意の集中・持続・配分という要素も含む。
〇︎せん妄:注意を集中して維持したり適切に移動させたりする能力の低下と意識レベルの変容が急性発症し、かつ変動する病態。


以上が主な分類となりますが、各項目にはさらに詳細な分類がなされているものもあります。
 

自費リハビリにおける高次脳機能障害に対する支援

高次脳機能障害に対する支援は、まずは発症直後から病院で開始されます。

急性期や回復期病院では、主治医の指示のもと、言語聴覚士や作業療法士が中心となって種々の高次脳機能検査にて評価を行い、課題となる能力の向上や生活動作の改善に向けてリハビリを行い支援しています。

退院後も継続してリハビリが必要な場合、通院による医療保険のリハビリや、介護保険下の訪問リハビリ、言語聴覚士・作業療法士が在籍しているデイケアやデイサービスなど、支援を受けるための選択肢があります。

また、当施設のような作業療法士による自費リハビリでの支援という選択肢もあります。

当施設での支援方法は、あくまでご利用者様の症状やニーズに合わせたオーダーメイドでのアプローチとなりますが、共通的なアプローチの一つとしては、

いわゆる生活期にあるご利用者様の生活状況を細やかに聴取させていただき、特に普段の生活の中で何が課題になっているかを分析した上で、目標設定を行っていきます。そして、どのように解決できるかをありとあらゆる限り模索し、解決方法を共有し、実践練習をしていきます。
さらに、その後の経過をお聞きしつつ、生活状況の変化に合わせて、目標の再設定をさせていただき、それに向けた課題解決方法の共有と実践練習をしていきます。

・感情や気持ちの発散
・頭の中の考えを整理
・家族や友人との関わり方の検討
・育児方法の検討
・洗濯や片付けなどの家事の効率的な方法の検討
・趣味の充実に向けた身体、精神面のケア
・職場で必要な作業の練習


上記は、実際に関わっているご利用者様と一緒に行なっているリハビリ内容の一例となります。

少しでも生活状況が好転すること、課題となる動作能力が向上すること、生活の幅が広がることを目的として、作業療法視点をもとに、できる限り寄り添いながら支援しております。


一方で、失語症など言語障害が主の方に対する言語訓練は言語聴覚士が現在のところ在籍しておりませんので、十分なサービスは提供できる体制にはありません。

高次脳機能障害でお悩みの方のお話を伺うと、「入院時は気づかれず見過ごされてきた」と仰る方が一定数いらっしゃいます。
退院して生活を再開し始めてから、「今までと違う」「以前よりも生活が困難(生活しにくい)」と感じる方は少なくないようです。

第3者が介入することで、新たな視点を持っていただき、生活がしやすくなることがあります。これは、自費リハビリの事業を通して我々としても実感しているところです。

高次脳機能障害におけるリハビリが必要な方、当事者の方との生活で何かお悩みが生じている方などで、当施設について詳細を知りたい、および利用を検討されたい場合には、ぜひお気軽にお問い合わせください。


≪参考≫
1)高次脳機能障害学(著:石合純夫、医歯薬出版株式会社.2008)

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