片麻痺に対するスリングエクササイズについて

今回は、レッドコードを使った上肢機能訓練の紹介をしたいと思います。

レッドコードは近年デイサービスなどにも多く導入されているので、見たこと・使用した経験がある方は比較的多いのではないかと思います。

当施設でもレッドコードを2セット導入しており、使用できるようになっています。

色々な使い方があるのですが、今回は上肢訓練での使用方法の紹介をしたいと思います。。

スリングエクササイズとは?

スリングエクササイズとは、天井から吊るされたスリングを利用し、上肢や体幹などを支え、身体の重さを免荷した状態でエクササイズを行う運動のことです。

当店ではレッドコード(インターリハ株式会社)を導入しています。

※レッドコードの製品紹介はこちらから



今回は、スリングエクササイズの中でも片麻痺上肢に焦点を当てて、リハビリの中でどのように利用しているかを紹介していきたいと思います。

 

上肢のスリングエクササイズに対する論文は、まだそこまで多くありません。

例えば、レッドコードを用いた急性期脳卒中者の上肢機能に対する効果検証の報告があります。1)

こちらの論文では、1回40分間の肩に対するスリングエクササイズを、週5日、4週間行ったところ、対照群と比較して、亜脱臼における骨頭間距離、肩関節の固有感覚、上肢の運動機能において優位な差が出たと報告されています。


また、亜急性期における報告もあります。2)

こちらでは、週5日、1日1回30分の肩に対するスリングエクササイズを4週間実施したところ、肩の痛みの軽減や筋力向上にも繋がることが示唆されています。

いずれも、急性期・亜急性期における対象者になりますが、生活期においても参考になる内容と考えています。

上肢に対するスリングエクササイズの実際


それでは、実際に、どのようなメニューを実施するのかを紹介したいと思います。
 

こちらは、論文2)を参考にした運動の一例になります。

写真のように、レッドコードで腕の重さを免荷した状態で、肩の様々な運動を行います。

肩の運動は、片麻痺症状がある場合、腕が重く、代償動作と呼ばれる、本来主動で運動が生じるはずの筋以外の筋を使用した運動が生じやすくなります。

このようにスリングを使用することで、腕の重さを感じずに、普段だと動かすことが難しい可動範囲での肩の運動が可能となります。

肩の痛みがあり、肩の屈曲範囲に制限がある方も、このようなスリングを用いた運動から運動療法の導入を開始すると、痛みが増悪することなく、随意性を高めることに繋げていけるケースもあります。



上記に示した運動以外でも、角度を変えて、苦手な角度での関節運動や、獲得したい角度での関節運動の練習などにも繋げていけますので、当施設では、必要な方には積極的に使用しております。


今回は、片麻痺上肢に対するスリングエクササイズについて紹介いたしました!

参考になれば幸いです。


●執筆者
中嶋侑
株式会社C-BRIGHT 代表取締役
保有資格:作業療法士

【略歴】
2010年に作業療法士の国家資格取得。急性期病院にて勤務後保険外リハビリの会社に非常勤勤務し、生活期リハビリの課題を認識する。その後個人事業を開業し保険外リハビリに従事しつつ、地域連携の必要性を感じ、都内訪問看護ステーション、神経内科クリニックなどでも非常勤として勤務し経験を積む。2023年1月に株式会社C-BRIGHTを創業。同年7月に東京都中央区人形町にて保険外リハビリ施設「PIECEs Conditioning & Community Place」をオープン。

【書籍】
●分担執筆:青木啓一郎/編著 明日から実践できる‼脳卒中の評価と治療.金芳堂.2022
●分担執筆:一般社団法人 協創リハビリテーションを考える会/編著 脳卒中当事者と家族のためのお役立ちガイド.2021



【参考論文】
1.Jung KM, et al. The effects of active shoulder exercise with a sling suspension system on shoulder subluxation, proprioception, and upper extremity function in patients with acute stroke. Med Sci Monit. 2019;25:4849-4855

2.Kim Y. J,et al. Effects of Sling-Suspension-Based Active Shoulder Joint Exercise on Shoulder Joint Subluxation, Pain, Muscle Strength, and Upper Limb Function in Patients with Subacute Stroke. Medicina, 2024;60(8), 1350.

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