• トップ
  • コラム
  • 【片麻痺上肢】課題指向型訓練における実際の課題例について

【片麻痺上肢】課題指向型訓練における実際の課題例について

片麻痺上肢に対する課題指向型訓練とは

脳卒中後の上肢機能に対するリハビリ方法として、『課題指向型訓練』と呼ばれるものがあります。

課題指向型訓練は、物品などを用いて、その方にとって必要な動作や課題(物をつまむ、掴む、日常生活の動作など)を設定し、反復して訓練していくリハビリ方法です。

関節運動を他動的に反復するのではなく、日常場面に繋がる課題を遂行できるよう、段階づけを行いながら、必要な関節運動を促し、実際の動作に繋げていく練習となります。

課題指向型訓練については、こちらの記事もご参考にしてみてください。
 

脳卒中後の上肢麻痺に対して、課題指向型訓練は非常に重要であることは先行研究からも明らかとなってきております。

日常動作を遂行する上でreach-to-grasp(手を伸ばして物をつかむ動作)は、日常生活に不可欠な動作です。

そのため上肢の麻痺を呈した方にとって、このreach-to-graspの機能が向上することが、生活動作の自立度拡大につながる可能性を持ちます。

課題指向訓練はまさに、このreach-to-graspの課題を個別に設定し段階づけを行いながら実施していくものになります。
 

課題指向訓練は以下にも示されているように、対象者の獲得したい動作を想定し、その獲得に向けて不足している動きを引き出せるよう課題を設定していきます。

課題指向型訓練のコンポーネントと実際の課題例



例えば、「髪を櫛でとかす」という目標があった場合、櫛を把持し続ける握力、櫛を操作する手関節の運動、頭部までリーチできる肩関節・肘関節の随意性など多様な機能が求められます。

仮に対象者の動作を分析し、「頭部までのリーチ機能が不足している」と評価した場合、


肩関節屈曲を促す部分的な練習

肩関節屈曲+肘関節屈曲など複数関節を組み合わせた課題練習

実動作練習(髪を櫛でとかす)
 


といった流れで、部分練習と全体練習を組み合わせていきます。

(実際には、こんな単純ではなく、もっと獲得すべき課題がある場合が多いかと思います)

 

この時、「肩関節屈曲の部分的な運動ってどのような課題をすればよいのか?」という疑問が浮かびます。

その答えの一例としては、このような課題が挙げられます。

※以下は、下記参考論文2)を参考に作成しています。
 

〇コラム:『棒を用いた肩の運動』より

こちらは、太さの異なる筒を2本用意し、外側の筒を上に滑らせることで肩関節屈曲の動きを促す課題となっています。

他にもブロックを積み上げる、コーンを積み上げる、など皆様も様々な課題がありますが、対象者の方に合わせて適切な課題を決めていくことになります。
 

肩関節以外の運動課題例もいくつか紹介しておきます。
 
これは、定規を持ち、両側にコーンを置き、前腕の回内外運動で定規をコーンにあてる課題です。
 
 

これは、定規を前腕につけ、そこを目印に手関節の背屈や橈屈といった運動を促す課題です。
目印があることで、その場所が目標となるので、運動を促しやすくなるケースがあります。
 

いかがでしょうか。

自主トレとしてもご提案できる内容になっていますので、段階付けを療法士と相談し、実践していただけると良いかと思います!

参考になれば幸いです。


●執筆者
中嶋侑
株式会社C-BRIGHT 代表取締役
保有資格:作業療法士

【略歴】
2010年に作業療法士の国家資格取得。急性期病院にて勤務後保険外リハビリの会社に非常勤勤務し、生活期リハビリの課題を認識する。その後個人事業を開業し保険外リハビリに従事しつつ、地域連携の必要性を感じ、都内訪問看護ステーション、神経内科クリニックなどでも非常勤として勤務し経験を積む。2023年1月に株式会社C-BRIGHTを創業。同年7月に東京都中央区人形町にて保険外リハビリ施設「PIECEs Conditioning & Community Place」をオープン。

【書籍】
●分担執筆:青木啓一郎/編著 明日から実践できる‼脳卒中の評価と治療.金芳堂.2022
●分担執筆:一般社団法人 協創リハビリテーションを考える会/編著 脳卒中当事者と家族のためのお役立ちガイド.2021



【参考論文】
1)Timmermans AA, et al. Influence of task-oriented training content on skilled arm-hand performance in stroke: a systematic review. Neurorehabil Neural Repair. 2010 Nov-Dec;24(9):858-70.

2)Turton,J.et al. Home-based reach-to-grasp training for people after stroke: study protocol for a feasibility randomized controlled trial. Trials,2013:14(1), 1-11.

PAGE TOP